今日、金属、樹脂、セラミック、繊維素材など様々な材料が使われています。
金属と一口に言っても合金を含めると数百種類に上り、成分構成であったり調質をすることにより強度を増したり耐食性を持たせたり、用途に応じたものがつくられています。只、素材の成分を変えるだけでは、目的の効果を得られない、あるいは非常に高価な材料となってしまうなど素材のみで全てを満足させることは出来ません。
その解決策のひとつとして表面処理が位置づけられています。
表面処理は、素材に何らかの処理を施して新たな特性を付加する、あるいは既に持っている特性を向上させることができます。それにより、製品寿命をのばしたり、燃費を向上させたり、排出ガスを低減することができるなど、環境的にも経済的にも非常に有用なものです。湿式と乾式とに大きく分かれ、湿式の代表的な処理方法としてめっきが広く使われています。一般にめっきというと、電気の力でニッケル、クロム、亜鉛、銅などを素材表面に付着させる電気めっきを指すことが多いようです。一例として、電気ニッケルめっきでは、ニッケルをイオン化しためっき浴中に被めっき物を浸漬し陰極とし、ニッケル金属を陽極として外部の電源を通じて両極間に電流を流します。陰極の被めっき物上ではめっき浴中のイオン化したニッケルが金属に還元され、めっき皮膜として析出していきます。
一方、無電解ニッケルめっきとは、文字通り電気を使わないニッケルめっきのことです。無電解ニッケルめっきでは、イオン化したニッケル(酸化剤)と還元剤をめっき浴中に溶解させておき、被めっき物を浸漬させると、その表面上で化学反応(酸化還元反応)が起こりめっき皮膜を析出していきます。以下に無電解ニッケルめっきの代表的な特徴を示します。
めっき皮膜のつき回りイメージ
無電解ニッケルめっきの代表的な特徴
寸法精度・形状精度が高い(均一なめっき厚さ)
化学反応でめっきを析出していくので、めっき浴の循環などにより常に新しいめっき液が触れるところには、形状、サイズに関わらず均一なめっき厚が析出します(μmオーダーの制御が可能)。
電気めっきは、電極との位置関係により、電気的に陰になってしまうところにはめっきが全く析出しない、また電気はエッジや鋭利な場所に多く流れる性質があるので無電解めっきと同レベルの均一なめっき厚を得ることは難しいです。
寸法精度が高い製品に対して、電気めっきはめっき後に研磨等を施し寸法を調整することが多いです。無電解めっきは、めっき前に寸法を合わせておけば、めっき後の調整は不要となる場合が殆どです。
耐食性に優れている
(ピンホール無し)
無電解ニッケルめっきは、P(りん)濃度が高まると非晶質になるので、結晶質の電気ニッケルめっきに比べ、耐食性に優れた皮膜が得られます。
元々被覆性が高いが20μm以上の厚付を行うと、皮膜上のピンホールなどの欠陥がなくなっていき更に良い耐食性が期待できます。塩素、フッ素などのハロゲン系のガスに対しての耐食性には秀でています。
また、ステンレス材で製作すると非常に高価なものとなってしまうものには、鉄材で製作して、めっきを施すことで、安価で目的の耐食性を得るという形でも多く利用されています。
めっき後の熱処理で硬度が向上する
めっき後の硬度は最も一般的な中リンタイプの無電解ニッケルめっきの場合、およそ500HV程度であるが、熱処理をすることにより結晶質となることで硬度は上がります。
300℃の熱処理をかけることで750HV以上となり、400℃で最も硬くなります。耐摩耗性目的で熱処理をして使われることが多いです。用途に応じて後述の複合めっきと選択して使われます。
熱処理温度と硬度の関係
いろいろな粒子を複合させることで特性が広がる(複合めっき)
フッ素樹脂、セラミック粒子、窒化ホウ素などを添加することにより、様々な特性を得ることができます。
フッ素樹脂を添加することで摩擦係数が下がり摺動性を向上させることができます。回転体あるいは往復摺動部分の静粛性目的で使われることも多いです。含有量を多くすることで撥水性を持たせることができます。金型の型離れ性も向上するので、離型剤使用量の削減目的にも利用されることがあります。
セラミック粒子は、非常に硬いので、それを分散させためっきは、耐摩耗性に優れています。環境問題など硬質クロムめっきの代替として使われることも多いです。
軽量化に寄与
自動車はじめ、様々な製品の軽量化の取り組みが盛んであり、素材を鉄材からアルミ材に変更されることが非常に多いです。只、アルミ材そのものの強度は低いため、めっきをすることで鉄材と同様の強度を持たせ、耐久の面でも目的を達成させています。
絶縁体でもめっき可能
電気ニッケルめっきは、被めっき物が導電性のあるものしか対応できないので、絶縁体である樹脂などは不可です。無電解ニッケルめっきは、電気を使わずに化学反応のみでめっきを析出させていくので、絶縁体でもめっき可能です。
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